ダブルダミー分析でわかること・わからないこと
ダブルダミーソルバーが答えているのは、非常に限定された問いです。52枚すべてが見えていて、両サイドが最善を尽くしたとき、各ディクレアラーは各デノミネーションで何トリック取れるか。この数値はディールの検討にきわめて有用である一方、「テーブルでどうなるかの予測」として読まれてしまいがちです。この記事では、ソルバーが計算しているものを整理し、24HCPあってもノートランプゲームが成立しないディールを実例として解析し、この数値が語ること・語らないことの境界を示します。
ダブルダミーソルバーが計算しているもの
「ダブルダミー」とは、誰も実際にはプレーしない形式のゲームを指します。すべてのカードが表向きの状態です。ディクレアラーはディフェンス側26枚すべての位置を知っており、各ディフェンダーも残り3ハンドを知っています。この条件下では、ディールは厳密な値を持ちます。互いに最善を尽くす限り、どちらの側もそれ以上改善できないトリック数です。ダブルダミーソルバーが返すのは、この数値です。
計算方法はシミュレーションではなく探索です。ソルバーは合法手のツリーを展開し、両サイドが最善を続ける前提で各局面を評価します。アルファベータ枝刈りと置換表により、本来なら天文学的な規模の探索がミリ秒で終わります。完全に確定したディールを探索するため、結果は決定的です。同じ52枚からは常に同じ表が得られ、標本誤差を考慮する必要もありません。
結果は5つのデノミネーション × 4人のディクレアラー、計20マスの表として提示されます。列を縦に読めば、あるディクレアラーにとって各デノミネーションがどうなるかがわかります。行を横に読めば、同じコントラクトがテーブルのどちら側から出たときにどうなるかがわかります。これは思われているよりも頻繁に効いてきます。どちらのディフェンダーがリードするかというだけの理由で、片方からならメイク、もう片方からならダウン1、ということが起こるからです。
実例:24HCPでもノートランプゲームがない
N/Sは合計24HCPを持ち、両メジャーに4-4フィットがあります。
| ハンド | ♠ | ♥ | ♦ | ♣ |
|---|---|---|---|---|
| North | K J 8 5 | A 9 7 4 | 6 3 | K 8 2 |
| East | 6 2 | T 8 | J T 7 5 2 | Q J T 3 |
| South | A Q 9 4 | K 6 5 2 | A 8 4 | 9 5 |
| West | T 7 3 | Q J 3 | K Q 9 | A 7 6 4 |
ゲーム判断の主たる基準をHCPに置くペアは、ここで3NTに到達することが多いはずです。ソルバーの答えは次のとおりです。
| デノミネーション | North | South | East | West |
|---|---|---|---|---|
| ノートランプ | 8 | 8 | 4 | 4 |
| スペード | 10 | 10 | 3 | 3 |
| ハート | 10 | 10 | 3 | 3 |
| ダイヤ | 6 | 6 | 6 | 6 |
| クラブ | 6 | 6 | 6 | 6 |
最善ディフェンスに対して3NTはダウン1、一方で4♠と4♥はいずれもぴったりメイクします。スートコントラクトでの2トリックの差は、どこからか湧いて出たものではありません。ノートランプではN/Sに育てられるロングスートがなく、ディフェンス側がトリックを取り切るのを止める手段もありません。メジャーコントラクトなら短いハンドの小さいカードがラフに使え、ディフェンス側のクラブとダイヤの勝負カードが勝負カードでなくなります。
重要なのは、このディールが特殊だということではありません。HCPが測っているものと、トリック獲得力が測っているものが別だということです。ダブルダミーの表は同じ52枚に対して全デノミネーションを値付けするため、この2つを分離できます。
両マイナーがどちらのサイドからも6トリックである点にも注目してください。両ペアが同じデノミネーションで同じトリック数を取れるとき、そのディールは純粋な競り合いに近く、どちらにも安いセーブがないことが表から一目でわかります。
この数値がテーブルでの結果と一致しない理由
ダブルダミーの結果でもっとも多い誤用は、これを予測値として扱うことです。予測値ではありませんし、その理由は両方向に働きます。
- ソルバーのディフェンダーはすべてを見ています。コントラクトを落とす唯一のリード、ディスカードを防ぐ唯一のスイッチ、コミュニケーションを断つダックを、ビッドやパートナーのシグナルという手がかりなしに見つけます。第1トリックを手探りでリードする人間のディフェンダーは、はるかに難しいゲームをプレーしています。
- ソルバーのディクレアラーもすべてを見ています。両面フィネスの読み違いをせず、フォールスカードにも引っかからず、必要のないセーフティプレーも取りません。クイーンの位置探しに懸かるコントラクトは、ダブルダミーでは確実にメイクし、実戦では五分五分になります。
- この2つの効果はディールごとに相殺しません。手探りのオープニングリードを見つけられるかどうかで決まるディールでは、ダブルダミーの結果はディクレアラーの実際の見込みを低く見積もります。両面の読みで決まるディールでは、逆に高く見積もります。
したがってダブルダミーの結果は、テーブルでの期待値ではなく「そのディールの価値」として読むのが適切です。自分のカードしかわからない状態でコントラクトがどうなるかを知りたいなら、それは別の計算、すなわちシングルダミーのシミュレーションになります。
本当に有効な使いどころ
- デノミネーションの比較。これがもっとも強力な用途です。同じディールに対して全デノミネーションが値付けされるので、「4-4のメジャーフィットは本当に5-3より良かったのか」といった問いに厳密な答えが出ます。
- セーブとパーの判定。表の両サイドを読めば、5マイナーのダブルドが相手にゲームをプレーさせるより安かったかどうかがわかります。
- コントラクトの誤りとプレーの誤りの切り分け。到達したコントラクトがダブルダミーで1トリック足りていないなら、どんな技術でもメイクできなかったということであり、検討すべきはプレーではなくビッドです。
- 多数のディールによる判断力の較正。同種のハンドを繰り返し解析すると、5枚目のトランプ、サイドスートのシングルトン、短いスートに向かい合った無駄なオナーが実際どれだけの価値を持つのかについて、感覚が育ちます。
ダブルダミーとシングルダミー、どちらを使うか
2つの分析は別の問いに答えており、使い分けは基本的に「何が見えている前提か」で決まります。
| ダブルダミー | シングルダミー | |
|---|---|---|
| 既知の情報 | 52枚すべて | 自分サイドのカードと、他ハンドへの条件 |
| 手法 | 全探索 | 条件を満たすディールのシミュレーション |
| 出力 | 各デノミネーションにつき厳密な1つの数値 | トリック数の分布 |
| 答える問い | このディールの価値はいくらだったか | 残りがわからない状態で何を選ぶべきか |
ディールが終わっていて真実を知りたいときはダブルダミーを使ってください。まだ判断の途中であるとき、つまり際どいゲームをビッドするか、2つのコントラクトのどちらを選ぶか、あるスートに賭ける価値があるかを決めるときは、シングルダミーを使ってください。実際にわかっている情報と矛盾しないすべてのレイアウトにわたって、その判断を値付けしてくれます。
よくある質問
ダブルダミーの結果は、ディクレアラーが取れるトリック数の上限ですか。
最善ディフェンスに対してのみ上限です。実際のディフェンダーは決定的なリードを外すことが十分な頻度で起こるため、テーブルではダブルダミーの数値より多く取れることが珍しくありません。逆に、ソルバーが直面しない読みをディクレアラーが迫られるディールでは、実際のトリック数は下回ります。
同じコントラクトなのに、誰がディクレアラーかでトリック数が変わるのはなぜですか。
オープニングリードが別のハンドから出るからです。K J x のような保持に対しては、リードが手前から通ってくるほうがディフェンス側にとってはるかに有利であり、片方向ではリードから守られているテナスが、逆方向では晒されます。各ペアについて2つの列があるのは、この差を一目で見るためです。
52枚すべてを入力しなければいけませんか。
ダブルダミー分析についてはそのとおりです。この計算は完全に確定したディールに対してのみ定義されます。自分サイドしかわからない場合は、残りを多数回埋めて分布を返すシングルダミーソルバーを使ってください。
ソルバーはどのオープニングリードを前提にしていますか。
4ハンドすべてを知ったうえでの最善リードです。これはまさにテーブルのディフェンダーには置けない前提であり、ダブルダミーの結果とテーブルでの結果を隔てる最大の要因です。